糖尿病とステロイド療法

ステロイド糖尿病は、ステロイド剤の副作用の一つですが、もともと潜在性糖尿病のある人にも起こりやすい疾患です。糖負荷試験で境界型や糖尿病型を示している症例にステロイド療法を行うと、急速に糖尿病を発症します。そのほか、高齢者や糖尿病の遺伝歴をもつ場合も糖尿病を発症しやすくなります。ステロイド糖尿病の特徴は、空腹時の血糖値の上昇が著明でなく、正常範囲であるケースが多いということにあります。
ステロイド投与とともにインスリンの必要量は増えていきます。血糖の日内変動を見ながらインスリン量を調節しなければなりませんが、コントロールするのに大量のインスリンを必要とすることがあり、調節に困難を感じることも多くあります。なお、経口血糖降下剤使用中の場合は、原則としてインスリン注射を必要とします。
ステロイド糖尿病の発見が遅れた場合は、非ケトン性高浸透圧性昏睡をおこすことがあります。これは、比較的急速に発症するため、注意が必要です。

ステロイドからの離脱

糖質ステロイド(GC)からの離脱は、必ずしもすべての疾患について可能とは限りません。

GCを離脱したあとで、相対的あるいは絶対的副腎機能不全に伴う種々の症状が生じます。これを広義の「ステロイド離脱症候群」といい、GC療法からの離脱にあたっては避けがたい問題となっています。時には、完全に離脱しなくても、維持量以下にGCを減量しただけで副腎クリーゼというべき重篤な状態に陥る場合もあります。

長期間GC療法を続けた患者では、その離脱に成功しても、その後最低1年間は、下垂体・副腎系の機能は低下しているとされます。これに関しては、1~10年間GC療法を続けていた数例の患者について、血中コルチゾール値とACTH値との相関を離脱前から離脱後9カ月以上に渡り追跡した結果、離脱直後には下垂体機能も副腎皮質機能も著しく抑制されていてこの時期に種々の不愉快なステロイド離脱小国軍や副腎クリーゼが起こるという研究があります。
ところが、離脱後2カ月もすれば、下垂体機能がまず回復し、2~5ヶ月後にはむしろACTHの過剰分泌が起こり、その血中レベルは健常人の5~10倍にも増加します。この大量のACTHに刺激されて、副腎機能も徐々に回復し、5~9ヶ月後には血中コルチゾール値もほぼ正常化します。9ヶ月以上経過すると、コルチゾ-ルによるネガティブフィードバックの効果もあって、血中ACTH,コルチゾールの値も全て正常域に戻ることがわかります。
この成績は、あくまでフィードバック機構を中心とした調節系の回復過程であり、ストレスに対する下垂体・副腎系の反応が完全に正常化するにはさらに時間を要するという意見もあります。

したがって、長期GC療法を行っていた患者では、離脱後最低1年間は副腎クリーゼの起こる可能性があります。GCの離脱後最低1年間は、このような不測の事態の起こりうることを患者に十分警告する必要があります。

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