アトピー性皮膚炎と保湿

アトピー性皮膚炎については、「乾燥と皮膚のバリア機能の低下を補完し、炎症の再燃を予防する目的」で(病院では)保湿が勧められています。

一般的に病院で言われるのは、「アトピー性皮膚炎の肌は、保護機能が弱いので、症状がなくても日常的に保湿が必要である」「入浴後は、皮膚の脂分が洗い流されているので、すぐに保湿剤をぬる」などです。保湿軟膏にはワセリン類・尿素類・ヘパリン類の3種類があります。これらの中から、季節や好みなどにより選択して使用されています。

当院に来られた患者さんは、保湿することが「当たり前」を通り越して「しないと不安」になっていることが多いように見受けられます。ずっと病院で「保湿しなければ悪化する」と言われ続けてきたのでしょう。肌の状態がひどい時には、入浴を避ける傾向になりますし、シャワーを浴びることですら避けたい、と感じます。痛みと痒みで気がおかしくなる、という状態では、仕方がないことです。カサカサに粉をふく、じゅくじゅくの汁がでる、かゆくてかきむしりたい、でもかいてはいけない。どうしようもなくて、ステロイド軟膏やプロトピック軟膏をぬる。副作用は大丈夫だろうか、でも他にどうしたらいいかわからない。とにかく、保湿してすこしでもマシにならないか。いろんな考えがぐるぐるになって、きちんと考えることよりも、医師に言われたとおりにするのがせいいっぱい。だから、外用薬もしっかり塗るし、保湿もしっかりしている。そういう患者さんが多いです。

ですが、落ち着いて、少し考えてみてください。

アトピーの症状が非常に軽度、少しカサカサしているな、という状態ならともかく、引っかきすぎて皮膚がごわごわになっているとき(苔癬化)や、こぶのように固くなってしまった痒疹、かきすぎて引っかき傷がでてきている状態、保湿でよくなっていますか?

アトピーではない、例えば紙で指先を切った時やころんで擦り傷になったとき、絆創膏をずっと傷口に貼っていたら、治りにくくなかったですか?絆創膏をはらずに、ほっとくとカサブタが出来て痒くなりますよね。痒くてカサブタをかいてしまったりするけど、いつのまにかきれいになおっていませんでしたか?

アトピーと切り傷を比較するのは乱暴かもしれませんが、アトピーの「引っかき傷」であれば普通の傷と同じと考えられないでしょうか。皮膚には、自分できれいに治す仕組みがあります。保湿は必要ありません。乾燥させて、皮膚が入れ替わるのを待っていれば、自然と新しい皮膚になります。保湿は、このサイクルを邪魔してしまいます。

ですから、当院では、保湿剤を使用しないことを勧めています。今まで、ずっと行っていたことをやめるのは、とても不安だと思います。ですから、初診のカウンセリングの時に、何故保湿がだめなのか、きちんと説明しています。納得したら、保湿をやめてみてください。一気にやめるのがこわければ、少しずつ保湿剤を減らしていってもかまいません。

今まで何年もアトピーとつきあってきた中で、思い込みや習慣で続けてきたことを「本当に必要なのか」と見直すことが必要です。

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