AGA(男性型脱毛症)

病院で行われるAGA(男性型脱毛症)への治療法

日本皮膚科学会の「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」では、5つの治療法が標準的治療試案としてあげられています。もちろん、治療法はここにある5種類に限定されるものではありませんが、病院で行われる治療法の代表的なものと考えられるでしょう。

1.    ミノキシジルの外用
2.    塩化カルプロニウムの外用
3.    医薬部外品・化粧品の育毛剤の外用
4.    フィナステリドの内服
5.    植毛

結論から述べると、ここでは「1.ミノキシジルの外用」と「4.フィナステリドの内服(但し男性のみ)」が「推奨度A(行うよう強く勧められる)」治療法となっています。また、次には「5.植毛」のうち、「自毛植毛術」が「推奨度B(行うよう勧められる)」となっています。

実際に、当院に来られている患者さん達のうち、病院に通院されていたことがある方達は、ミノキシジルとフィナステリドの処方を受けていました。ただ、現実には、これらの処方により、症状が改善されなかった、一時的に改善されたものの悪化した、という方が多く、当院で治療を受けられています。

なぜ、病院の治療で改善されなかったのでしょうか。
それを知るために、何を根拠として、これらの治療法がなされるのかをみていきましょう。

ミノキシジルについて

ミノキシジル(Minoxidil)は、アメリカで1960年代に高血圧に対し血管拡張剤として開発されたものです。ミノキシジルを服用した患者さんに副作用として多毛症が多く発症したことから、研究が進み脱毛の治療薬として販売されるようになったものです。内服薬として副作用が発見され、当初は2%のミノキシジルが外用薬ロゲインの名前で販売されました。
当たり前のことですが、もともとは血管拡張剤として開発されており、皮膚に塗るタイプの外用薬であっても体内に吸収されれば、脱毛の改善の効果と共に血管を拡張する効果もあらわれます。高血圧で血管を拡張する必要があるのであればよいでしょうが、正常な状態であれば、さらに血管を拡張することになり別の病気を引き起こす可能性があります。
そのため、医師の管理のもとでの使用が推奨されています。
ただ、ミノキシジルは一般用医薬品として、1999年から大正製薬がリアップとして発売しており、薬局で購入することが出来ます。(2009年に第一類医薬品となったため、薬剤師が不在になった時には販売できなくなっています。)

なお、ミノキシジルは、外用薬では5%のものが男性向けには推奨され、1%のものが女性向けに推奨されています。濃度の低いものよりも高いものが、より発毛を促進するとされており、副作用の発現率が変わらなければ、より高いものを推奨すると考えられます。(あくまでも、発現率であり、副作用の程度ではないため、より濃度の高いミノキシジルを摂取することで、重篤な副作用になるかどうかは考慮されていません。)
医薬品の試験は、一般的にどの割合の人に効果があるかをみるものであり、副作用の割合がある程度ある場合は、医師が管理することによりコントロールするのが前提で販売されています。9割方の人に効果があるのであれば、よしとしていると考えたほうがよいでしょう。また、ミノキシジルの長期使用にしても最長が2年間での試験であり(かつ件数が少ない)、それ以上の長期使用がどのような副作用をもたらすのかなどの検証はされていません。
平成25年に行われたリアップ(リアップX5)の再審査報告書では、3072の調査症例数に対し、8.82%の271の副作用発現例があったとされています。
副作用がどのようなパターンで発生するのかはわかっていませんが、もともと何故ミノキシジルが発毛を促進するのかの明確なメカニズムがわからないまま薬として販売、使用されているのです。仕方のないことかもしれません。(大まかには、ミノキシジルが男性ホルモンを抑制することで、毛母細胞の活動が活発化させています。ミノキシジルがどのようなメカニズムで男性ホルモンを阻害しているかというのは不明です。)
最近では、より発毛の効果を得るために、ミノキシジルタブレット(ミノタブ)が内服薬として処方されることもあります。(個人で海外から輸入して服用されるケースもあります。)
当たり前ですが、皮膚への塗布による摂取よりも、直接的に摂取することで効果が高まりますが、副作用も同様です。
ミノキシジルの効果は、摂取している期間にのみ現れるので、外用薬であれば塗布し続けなければなりませんし、内服薬は服用し続けなければ、その効果は消え、脱毛がおこります。副作用のリスクと脱毛の効果をどうとらえ、薬を使用するのか、しっかりと考える必要があります。

フィナステリドについて

フィナステリド(finasteride)は、1990年代に前立腺肥大の治療薬として、開発・販売されました。その後、男性型治療薬として臨床試験が行われ、1990年代後半には、FDAが治療薬として認可しました。日本では、1年の臨床試験を行った後2005年に承認、プロペシアが発売されています。フィナステリドは、男性ホルモンの作用を抑制する効果があり、発毛を促進させるというよりも、脱毛しにくくする作用があります。臨床試験では、1日当たり1mgを内服することで男性(国内では20歳以上)に効果があるとされていますが、女性への効果は認められなかったため、男性のみへの処方となっています。(妊婦へのフィナステリドの投与は、男性の胎児への影響が大きいために禁止されています。)

日本では、ミノキシジルと並んでフィナステリドは男性型脱毛症の治療方法として推進されていますが、アメリカでは2012年にポストフィナステリド症候群財団が設立され、フィナステリドの副作用に関するデータを収集しています。

病院での治療では、6ヶ月以上の服用が必要とされており、脱毛の予防をするにはずっと飲み続けなければならない薬とされています。(服用を中止すると、脱毛が進むため。)当たり前ですが、元々は脱毛症の治療薬として開発されていない薬であり、男性ホルモンに影響を及ぼす非常にリスクの高い薬でもあります。

ミノキシジルと同様、フィナステリドも脱毛症の原因に対し、根本的な要因を取り除きもとに戻す、というような治療ではありません。あくまでも、脱毛という症状に対して、そのメカニズムを(分かっている範囲で)改変することにより、症状をでなくしているだけのものです。

乱暴な例えかもしれませんが、古くなってきた家が地震によってヒビが入った時に、ヒビの箇所を新しく板でふさぐようなものです。応急処置としてはよいのですが、ずっとそのままであれば、また地震に会うたびに新たな被害を受けてしまいます。本来は、地震で壊れやすくなっている構造を見直し、地震に耐えるような処置が必要です。

人の身体も、応急処置だけでなんとかなるわけではありません。

例え、脱毛しやすい遺伝因子を持っていても、100%発症するわけではないのです。「発症しやすい」ということと「発症する」という現象には、何らかの働きかけがあるためにつながりが出来るのです。その「働きかけ」は人によって様々です。大きなストレス、蓄積された生活環境、あるいは他の病気など、それらを探し出し、なくしていくのが本当の治療です。

鍼治療は、その豊富な臨床データから、人の身体を刺激することで弱められた機能、異常を起こしている部分をもとに戻すことを可能にしています。

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